Flat4-粋のエレメントの口径がΦ１０ｍｍに決まるまで

Flat4-粋のエレメントは当初Φ１２ｍｍで設計を進める予定でした。

口径Φ１２ｍｍのエレメントを片側あたり２個使用する事で、振動板面積換算で口径Φ１６．５ｍｍ相当のエレメントと等価になり、カナル型イヤホン史上最大を達成できる事になるからです。

ところが、Φ１０ｍｍエレメントの方にもメリットが多い点に気づきました。

１０ｋHz以上の高音域をいかに伸ばす事が出来るかを考えると、小口径の方が断然有利です。

Φ１２ｍｍのエレメントを使用する場合、耳への装着の都合からエレメント前面の放音口をオフｾﾝﾀｰする必要が有ります。

一般的に口径と高域の再生限界は反比例しますから、Φ１２ｍｍエレメントはΦ１０ｍｍエレメントより２０％低い周波数が再生限界になります。更にオフセンターの度合いにより再生限界が低くなります。

Flat4-粋では開発を進める内に、６ｋHz前後の外耳道閉管共振の緩和と同時に１０ｋHz以上の高音域の再生帯域を延ばす事が音の拡がりに重要で有る事に気づきました。

また、Φ１０ｍｍのエレメントを水平対向配置でドライブする事により、機械振動がキャンセルされ振動板を含む振動系の基点が明確になる事で、聴感上Φ１６ｍｍをしのぐ低音感を得られる事が分かりました。

以上よりエレメントの口径は利点が圧倒的に多いΦ１０ｍｍに決定いたしました。

かくしてFlat4-粋は今までのカナル型のイヤホンで難しかった３つの難問を一挙に解決しました。

＊振動系の基点が明確になる⇒密閉型を超える深低音

＊６ｋHz前後の外耳道閉管共振の抑制⇒ダイナミック型ながら滑らかな中高域の実現

＊１０Khz以上の周波数の音圧の（劇的な）改善⇒オープンエア型の音の拡がり